貴金属の実験



  貴金属とは、産出量が少なく、伝統的・商業的に価値のある”貴重な”金属、のほかに、腐食せず外観が変わることがないといったような、化学的に”貴な”金属、という意味合いもある。

  ・ (予備実験) 金、白金、ロジウム溶液のマグネシウムによる析出: 金(Au)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)の1000ppm(金属として 0.1%)塩化物溶液に、化学的に”卑”なマグネシウム(リボン状)を入れると、それぞれの金属が置換(セメンテーション)して析出する。(10mlで10mgほど、* ロジウムはもう少し濃度が高いと、きれいなバラ色になる。(Rhodiumはバラ:roseからの命名))
  金は融点が1064.2℃で、ガスバーナー(1400℃)で加熱すると溶融する。白金、ロジウムは融点が高い(Pt:1768.3℃、Rh:1964℃)ので酸素アセチレンバーナー(3000℃)でないと溶融しない。




  (1) 銀の実験:


  銀(原子番号 47、原子量 107.87、比重 10.49、融点 961.8℃、沸点 2162℃、結晶構造 FCC(面心立方)、クラーク数 0.00001%)は、加工しやすく、貴金属の中でも価格が安く、化学的にも”卑”な方なので比較的扱いやすい金属である。 銀の導電率(63×106 m-1・Ω-1)、熱伝導率(429 W・m-1・K-1)、可視光の反射率(98%)はいずれも金属中最大であり、展性、延性は金に次ぐ。(1gの銀は引き抜き加工で約2200mの線に延ばすことができる)

  銀は塩酸や硫酸には、水素よりもイオン化傾向が小さく、塩化銀、硫酸銀という水に不溶性の膜を生じて溶解しないが、酸化性の酸である硝酸には 希硝酸、濃硝酸共によく溶解して硝酸銀(AgNO3)を生じる。(希硝酸ではNO、濃硝酸ではNO2を発生)
  硝酸銀の水溶液は、シアンイオンやチオ硫酸イオンにはそれぞれの化合物の沈殿が出来るが、過剰に加えるとそれぞれの錯イオンが形成され溶解する。シアン化銀(AgCN)は銀メッキに用いられる。 銀は空気中で安定ではあるが、硫黄化合物(硫化水素など)には反応して表面が黒くなる欠点(Ag2Sの生成)があるので、銀器や銀めっき製品の上に、薄くパラジウムやロジウムめっきが施されこの点が改善されている。 また硝酸銀はアンモニア水と徐々に反応して 雷銀(Ag3N)という黒色の爆発性物質ができるので注意を要する。

  銀の用途は、宝飾品や食器、貨幣、めっき、電子産業(コネクタ、電線、高周波用部品のめっきなど)、写真術、鏡、銀細工、銀ロウ、歯科用、などさまざまな分野に及ぶ。

  ・ 硝酸銀から銀の生成: 硝酸銀水溶液に炭酸ナトリウムを加えると、炭酸ガスを発生して炭酸銀(Ag2CO3)が沈殿する。これは不安定で、光に当たると表面が分解して黒っぽくなる。炭酸銀を加熱すると 300−400℃で分解して、黒色の酸化銀を経て、銀に変わる。( 注) 硝酸銀は皮膚や衣類などの有機物と反応して黒くなるので決して付けないこと) また、銀を空気中で溶融するとき、融点付近で酸素を銀の体積の約20倍も吸収し 凝固時放出するので、表面があばたになる。銀点(=銀の融点)測定の際も溶存酸素によって大幅に狂うので注意が必要。

           Ag2CO3 → Ag2O + CO2↑ 、     2Ag2O → 4Ag + O2↑ (280℃分解)



       ※ 銀樹、銀鏡の実験について: → ”銀の実験”参照



  (2) 白金の実験:


  白金族元素は、旧・第[族(第8族)(現在の8、9、10族)に位置し、鉄族元素(Fe、Ni、Co)のさらに大きな周期に位置し、銀や金とも隣り合わせである。5、6周期の各3つ組元素で、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)の6元素が白金族元素と呼ばれ、ランタノイド収縮によってほぼ同じ原子半径の元素群である。(比重は異なる) 産出は合金での形が多く、非常に偏っている。



  白金(Pt)は、融点(1768℃)が高く、化学的に安定で酸・アルカリにも耐え、加工もしやすいので、化学実験や化学工業の装置などによく用いられている。(ただし、高温で炭素を吸収し低温で放出するので脆くなる。ガラスや酸化物単結晶材料などは溶解できるが、アルカリ溶融では侵食される。) またソーダガラスとの熱膨張率が近いので、ガラス封入が容易である。ただし、熱した王水(濃塩酸:濃硝酸=3:1)には溶け、塩化白金酸(ヘキサクロロ白金酸、H2PtCl6)となる。これは白金化合物や触媒製造、めっきなどの出発物質となる。 白金の用途はさまざまな分野に及び、宝飾品のほかに、めっき、化学用・自動車用の触媒、化学用のるつぼ・容器、電極、熱電対、点火プラグ、燃料電池、万年筆のペン先、磁石、医薬品など非常に多岐にわたる。


  @ 白金線の王水への溶解: 有毒ガス発生・腐食注意! ・ 熱電対用白金線(φ0.5)数gを熱王水に溶解して、塩化白金酸(ヘキサクロロ白金酸、H2PtCl6・6H2O、潮解性)を作製する。 完全に溶かした後も、2−3回蒸発乾固と濃塩酸を加えることを繰り返して、塩化ニトロシル(NOCl)を追い出す。最後の蒸発乾固は蒸発皿で水分を少し残すようにして注意深く行う。(結晶化のとき塩化水素が一気に放出するので注意。* 塩化水素は周りの金属などを非常に錆びさせるので、戸外、ドラフトなどの排気がよく行き届いた環境で行なうこと!) 代表的な反応は、

            3 Pt + 4 HNO3 + 18 HCl → 3 H2PtCl6 + 4 NO + 8 H2O

  ・ 塩化白金酸は、ナトリウム塩は水溶性なのに対し、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩は難溶性なので、定性分析でナトリウムと分離するのに用いられる。(K2PtCl6、黄色沈殿) また、塩化白金酸を加熱すると白金に分解するので、濃溶液をセラミックウールなどにしみ込ませて焼くと、酸化触媒として有効な”白金石綿”になる。また、アンモニア水と亜硝酸ナトリウムと作用させると、ジアミノ亜硝酸白金(Pt(NH3)2・(NO2)2)が生成して沈殿する。これも焼くと容易に白金に変わる。


  ・ 熱電対用の白金−ロジウム合金線(Rh13%)から、ロジウムを分離する。王水には純白金よりもはるかに溶けにくいが、何回も王水と加熱して溶かし切る。MgでセメンテーションしてPt、Rhの混合粉を得、再度王水と熱して 溶けやすい白金を除去すると、ロジウム粉末の残渣ができる。 これを時間をかけて熱王水に溶解させ塩化ロジウム(RhCl3、赤ワイン色)溶液とし、水酸化カリウム溶液で中和して 水酸化ロジウム(Rh(OH)3、黄褐色)を沈殿させる。 この水酸化ロジウムは希塩酸や希硫酸に容易に溶け、ロジウム化合物やロジウムめっきの出発原料となる。



  A 白金めっきの実験: 換気注意! ジアミノ亜硝酸白金(ジニトロジアミン白金、Pt(NH3)2・(NO2)2、白金分:60.7%、黄白色の軽い針状結晶、水に難溶・・・ @の塩化白金酸から手製)Pt として10g/l、硝酸アンモニウム 100g/l、亜硝酸ナトリウム 10g/l、アンモニア水(28%) 55ml/l を、浴温度90〜92℃、電流密度 1A/(dm)2(このとき 電流効率 10〜20%、めっき速度 1μm/10分)で、不溶性陽極(白金板、白金めっきチタン板、イリジウムめっきチタン板など)でめっきする。電解中の攪拌は十分行なう方が望ましい。

  ・ 実験では、被めっき物にφ10mmチタン棒を用いたので、200ccトールビーカーに入れて、浸漬長 5.5cm(電極間距離2.5cm)、面積S 0.2(dm)2、∴電流 I = 200mA(ただし円柱形なので若干下げる)、 Pt(NH3)2・(NO2)2: 2.5g、NH4NO3: 15g、NaNO2: 1.5g、NH3(28%): 約8ml を 脱イオン水に溶かして150mlとし(90℃近くに加熱すると溶ける)、手持ちのイリジウムめっきチタンメッシュを不溶性陽極として白金めっきを行なった。電解電圧は1.5V程度だった。
  チタンにめっきをする場合、2〜7μmで平滑で光沢が良く、厚さ10μmまではピンホールやクラックが発生しないとされる。 ただし、300ccビーカーで湯煎したところ、浴の温度は89℃前後でやや低めだった。 浴の蒸発がかなりあるので、約10%アンモニア水を途中で2回補充して 約1時間電解した。また、裏側が付かないので、チタン棒を180°回転させて再度浴を調整してめっきした。
  (* ジニトロジアミン浴は、このアンモニウム塩使用以外に、 ジニトロジアミン白金 16.5g/l、酢酸ナトリウム 70g/l、炭酸ナトリウム 100g/l、80〜90℃、0.5A/(dm)2で電流効率35〜40%、も用いられている。)


  (追加 2021 6) A’ ジアミノ亜硝酸白金(ジニトロジアミン白金、Pt(NH3)2・(NO2)2 の作成:

  まず、塩化白金酸(ヘキサクロロ白金酸、H2PtCl6・6H2O)と塩化カリウムKClの水溶液から、塩化白金酸カリウムK2PtCl6を沈殿させ、ろ過・洗浄・乾燥して作っておく。このK2PtCl6の9gを取り、水100mlに懸濁させ加熱し、亜硝酸ナトリウムNaNO2の固体粉末15gを少しづつ加え、水を足しながら煮沸し続け、液が(黄色から)無色になるまでNO2を追い出す。
  このK2(Pt(NO2)4)溶液に、反応量の2NH3を加え(28%NH320ml+水8ml→20%NH3、 この20%NH3を3.2ml加える)、水を4−5倍加えて煮沸するといったん溶け、放冷すると多くの針状結晶が沈殿する。 これをもう一度熱水から再結晶する。

 



  (3) 金の実験:


  金(Au、原子番号 79、融点 1064.2℃、比重 19.30、電気陰性度(ポーリング)2.54、クラーク数 0.005ppm=5×10-7%)は、創世記の大昔から、産出量が少なく価値あるものとして、貨幣に相当するもの、祭儀、宝飾品として用いられてきた。純金は展性・延性に富み、写真の10cm角・厚みが0.0001mmの金箔は、1mm立方の金に相当する。 金は化学的には非常に安定で、ほとんどの酸・アルカリに溶けず、空気中で酸化せず、変わらない輝きを呈するので、ラテン語ではAurum(光るもの)と呼ばれ、金の元素記号はAuである。
  しかし、金は王水(使用直前に混ぜた濃塩酸(36%前後):濃硝酸(61%前後)=3:1)には溶け、塩化金酸 HAuCl4 を生じる。また金は、塩素水、臭素水、濃塩酸と過酸化水素水との混合液、ヨードチンキなどの遊離状のハロゲンと反応して溶ける。 水銀とはアマルガムを生じて溶ける。

            Au + HNO3 + 4 HCl → HAuCl4 + NO + 2 H2O

  @ 金の溶解:  純金箔をガラス棒に巻き付け、塩酸と過酸化水素水との混合液に入れると、発生した遊離状の塩素によって簡単に溶ける。( 注) 金箔に少しでも銀が混じっていると急に溶けにくくなる) ヨードチンキ(ヨウ素+ヨウ化カリウムの水溶液)にはゆっくり溶ける。


  A 再生金の実験:  電子部品の廃材のめっきされた金を回収してみた。基板のプラスチックを焼いてから、銅を濃硝酸で溶かし去り、残りの炭素分を強熱して燃焼させると、るつぼの底に金粉(+灰分・SiO2など)が残る。
 

  (参考)  ガーナにおける金堀り:

  筆者の友人がアフリカ・ガーナでやっている金採掘現場:(ガーナは金採掘量が世界で10位) ガーナでは破砕設備が必要な”山金”ではなく、露天掘りに近い”川金”が多い。ただし、金脈の金含有量が平均3〜7g/ton程度なので、普通は 小規模の人海戦術では採算が合わない。採算が取れるためには、いかに大量の鉱泥を処理できるかにかかっている。このプレステア地方の湿地帯で、大規模方式で効率よく採掘作業を行なわなければならず、ある程度の投資が必要となる。 最終工程では金を”寄せる”ために水銀を用いる。( 注) 水銀蒸気を吸い込むと喉がつぶれます)





        * 聖書における「金」の意義と 金の奇跡について:


  貴金属である、金、銀、白金などは、地殻の中で極めて局所的に集まっています。これは、たとえばアルカリ金属や希土類元素がどこにでも広汎に分布しているのとは対照的です。”月の石”の分析結果からは、月の表面にはアルカリ金属元素がほとんど蒸発してしまって無くなり、灰長石として CaO、MgO成分などの蒸発しにくいアルカリ土類金属しか残っていないことから、創世の始め、地殻が形成された時の温度は地球の方がはるかに低かったと推定されています。
  一方、金、白金などは、反応性が鈍く、重いためか、単体金属として採取され、特定の地域の特定の鉱脈にのみ存在する”初めから貴重な”物質であったと思われます。金、銀のクラーク数が、それぞれ 5×10-7%、1×10-5%に対し、たとえば 地殻に広く分布している アルカリ金属のルビジウム(Rb)、希土類のスカンジウム(Sc)はそれぞれ 3×10-2%、5×10-5%でかなり多いにもかかわらず価格が非常に高いものになっているのは、いかに貴金属が(また、銅や鉛、アンチモン、ビスマスなどの鉱脈も、)採取しやすいように偏って存在しているかを表しています。
  (* ただし、スカンジウム、ルビジウムは 未だに これといった用途が無く、大量生産されていないという理由もある。白金族のオスミウム(Os)は用途がほとんど無く、値段も非常に高い。)



   「その地(エデンの園から流れ出る4つの川の一つ、ピション川が流れるハビラの地)の金は、良質で、また、そこには、ブドラフ(不明: 宝石の一種)と しまめのうもある。」(創世記2:12)

  ・・・ 金は歴史の初めから人類によく知られ、人類の堕罪以前、創造の初めから用いられてきた。神様が人に任せ、管理し、支配させる「仕事」(創1:28、2:15)と同時に、物々交換ではなく 金による「貨幣経済」も初めからあったのです。

   「一年間にソロモンのところにはいって来た金の重さは、金の目方で六百六十六タラントであった。」(列王記10:14)、
   「・・・ 銀はソロモンの時代には、価値のあるものとはみなされていなかった。」(10:21)

  ・・・ 古代イスラエルの栄華を極めたソロモンの時代には、オフィル(アフリカ南部(今のジンバブエ?)の地名)からの金が入って来て、主の栄光とイスラエルの繁栄を誇示するために用いられた。(1タラント=約35kg、あるいは、26リットルの水、人の重さの程度) また、神殿の材料、王の器、椅子などにもふんだんに用いられた。

   「私は再び尋ねて言った。「二本の金の管によって油((直訳)金)を注ぎ出すこのオリーブの二本の枝は何ですか。」」(ゼカリヤ4:12)  ・・・ 金は「聖霊様」を表しています。

   「七つの金の燭台のただ中を歩く方が言われる。」(黙示録2:1)  ・・・ この場合、「金の燭台」は、「教会」を表しています。

   「信仰の試練は、火を通して精錬されてもなお朽ちて行く金よりも尊いのであって、イエス・キリストの現れのときに称賛と光栄と栄誉に至るものであることがわかるのです。」(Tペテロ1:7) ・・・ 金が「朽ちる」とは、世の終わりのときに万物が滅ぼされることを言っています。「いつまでも残るものは、信仰と希望と愛」(Tコリント13:13)、「信仰がなくては神に喜ばれることはありません。」(ヘブル11:6)のように、この地上において、主のことばを信じる「信仰」の歩みをする者が、物質の金よりもはるかに優れた、主の御前に永遠に価値あるものを獲得することができるということです。

  (* 因みに、聖書では”宝石”は、旧約聖書の律法では「イスラエル12部族」、新約聖書の黙示録では「12使徒」を表しています。)



  神様は時々、「金の出現の奇跡」によって、わざをなされます。

  ・ 集会でわざを行なう器として、金歯の出現で有名な アルゼンチンの器、カルロス・アナコンディア師や、金歯、金粉の奇跡が伴うインド系アメリカ人の器、マヘシュ・チャブダ師がいます。金歯の確認は、会場に居合わせたクリスチャンの歯科医が行い すべて本物であったことが報告されています。

  ・ 2002年東京の教会で、ブラジルの神の器、モアシル・ペレイラ師による、金歯、銀歯などの出現の奇跡がなされましたが、筆者が直接彼に確認したところ、歯以外の出現した金は、彼の教会に所属する大学教授による分析で、すべて純金だったそうです。

  ・ 2006年北海道の聖会で、神様ご自身が直接、金粉の奇跡をなされました。(→ photo ) 会場の講壇やステージ一面にたくさんの金粉・金粒が降りましたが、この奇跡には、神様からのメッセージが伴い、ちょうど、”アイヌ人に対する負の歴史の悔い改め”のところで奇跡が起こりました。神様は、「国家レベルの罪の悔い改めの祈り」を強調するためにわざを行なわれました。

  ・ カナダのある地方の教会で、若者が都市部に出て高齢化して、経済的に厳しい状態のときに、教会にたくさんの金粉が降り積もり、一升ビン位のビンに136本もの金粉が集まりました。この場合は、神様が教会をあわれみ、経済的に富ませるという種類の奇跡でした。(埼玉県、S.S.教会、A師のあかし)


  神様は、世の初めに天地万物を「創造」されましたが、現在も局所的に、「奇跡」、「いやし」という 「再創造」のわざを、創造のときと同様に行なわれます。これは、神様が、今も生きて働いておられる「創造の神」であることのあかしです。



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